南仏、地中海沿岸のコート・ダジュール。シングルマザーのマルレーヌは、浜辺にほど近いアパートで“エンジェル・フェイス”と呼ぶ8歳の愛らしい娘エリーとともに暮らしていた。そんなマルレーヌが純白のウェディングドレスに身を包み、人生で最も晴れやかな日を迎える。不器用だが誠実でハンサムな男性ジャンと恋に落ち、迷うことなく結婚式を挙げたのだ。ところがいつもの悪癖で酒をあおり、気が高ぶって我を見失ったマルレーヌは、結婚披露パーティーの真っ最中、ジャンに“不適切な現場”を目撃され、ようやくつかんだ幸せは幻のように消え失せてしまう。エリーはその日、美しい母親が無様に壊れゆく姿を、ずっと黙りこくって見つめていた。定職に就かず、何事にも気まぐれで突発的に行動するマルレーヌの生活は、すでに行きづまっていた。ソーシャルワーカーが調査にやってきた際には賢いエリーの機転によって切り抜けたが、スーパーマーケットへ買い物に行くとクレジットカードが使用不能になっていた。ヴァカンス・シーズンが過ぎ去った夏の終わり、新学期が始まった学校にエリーを送り届けると、扇情的なファッションで他の親たちの好奇の目にさらされる。それでも何とか生活をたて直そうと職業安定所に足を向けるが、未練がましくジャンに電話をかけても彼はもう応答してくれない。自宅のベッドで無気力にふさぎ込むようになったマルレーヌは、土曜の夜、気晴らしにエリーを連れてナイトクラブに繰り出した。そして、そこで出会った新しい男と意気投合し、「これからどこへ行くの?」と問いかけるエリーをひとりでタクシーで帰宅させ、そのまま忽然と姿をくら眩ましてしまう。マルレーヌは男と消えたまま、帰ってこなかった。アパートに置き去りにされたエリーは、ひとりで寝起きして学校に通うようになる。学校では万聖節に上演する演劇の配役が発表され、エリーは人魚の役を演じることになるが、クラスメートの子供たちから異端視されている彼女は、「エリーは変な子。酒クサいんだ」とつまはじきにされるはめに。学校を無断欠席するようになったエリーは、街で不良どもにからかわれているところをフリオに助けられる。フリオは海辺のトレーラーハウスで暮らしている青年で、エリーとマルレーヌの部屋の向かいに住むアルベルトの息子だ。エリーは心臓を病んで高飛び込み競技を断念し、わけあって家族と断絶したフリオに親しみを覚え、フリオもまた「パパは知らない。ママはいなくなった」というエリーの言葉に耳を傾けていく。それはこの世界で孤立し、心に傷を抱えた者同士の魂の共鳴だった。そんなある日、酔いつぶれて溺死した何者かの遺体が浜辺に打ちあげられ、エリーはマルレーヌの存在を葬るかのように、唯一の友だちである同級生アリスに「ママは死んだ」と告げるのだった。やがてマルレーヌが無人のアパートに帰ってきた。エリーこそはかけがえのない心のよりどころだと思い知ったマルレーヌは「……エンジェル・フェイス!」と叫び、必死にあちこちを捜し回る。その頃、行き場を失ってさまよっていたエリーは、危ういところをフリオに救われ、マルレーヌは愛する娘との再会を果たす。しかし、自分を捨てた無責任な母親との絆を断ち切ることを決意したエリーは、頑なにマルレーヌを拒絶する。そして万聖節の演劇が催される当日、人魚のコスチュームをまとったエリーは衝撃的な行動に出るのだった……。
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マイ・エンジェル
(C) 2018 WINDY PRODUCTION - MOANA FILMS - MARS FILMS LYNK HOLDINGS LIMITED - MY
2019年8月10日(土)公開